Epic Rap Battles of History徹底解説

海外発のYouTubeシリーズ、Epic Rap Battles of Historyを日本語で解説します。

【EPICラップバトル解説】新旧アーティスト対決 モーツァルト vs スクリレックス (後半)

モーツァルト vs スクリレックス リリック解説の続きです。

前半は→こちら

 


 

[Skrillex 2nd verse]

 

 I attack, you decay; can't sustain my releases!

 (俺は攻撃 お前は堕落する 俺のリリースに耐えられない)

スクリレックスが攻撃的に音楽活動をしていく一方、モーツァルトはどんどん貧乏になっていきました。リリースとはスクリレックスのCDのリリースのことで、それにモーツァルトは勝ち目がないぞ、という意味です。

そしてこのラインには言葉が隠されています。「Attack」「Decay」「Sustain」「Release」シンセサイザーの4つのつまみですね。よくできた言葉遊びです。

 

Sidechain, Wolfgang! Bangarang you to pieces!

 (サイドチェインだウォルフガング!お前をバンガラングして粉々だ!)

サイドチェインとは、エレクトロ音楽によく使われる手法で、ある楽器の音量に対応して、別の楽器に圧縮をかけるというものです。四つ打ちの音楽で、バスドラムの「ドッドッドッドッ」に合わせてベースがブォーンブォーンブォーンブォーン」のような変化をみせるのを聴いたことがある人も多いと思います。

ウォルフガングはモーツァルトの名前ですが、エレクトロミュージシャンのウルフギャング・ガートナーともかかっています。

「バンガラング」はスクリレックスの曲の名前からきています。「ぶっ壊す」ようなイメージの単語です。

 

I'm a self-made man. You're a slave to your papa! 

 (俺は自力でのし上がった お前はパパの奴隷だ)

前半にも出てきたように、モーツァルトは父親から厳しい音楽指導を受けていました。それに対してスクリレックスは子どものころから自分一人で音楽を作って、ここまで上り詰めました。

 

I'm a r-r-rock star, mix you with the bass and drop ya!

(俺はロックスター お前をベースと一緒にドロップしてやる)

スクリレックスはもともと「From First To Last」というロック・バンドのボーカルをつとめていました。

「ドロップ」は、ここでは2つの意味をもっています。ダブステップで、穏やかな曲調から一転して「ブォーーンヴェヴェヴェ〜」のような激しい曲調になることを「ベースドロップ」といいます。また、「drop」という単語には、「殴り倒す」という意味もあります。ベースドロップすると同時にお前を倒してやるぜ、ということですね。

 

Global! My strobes glow like Chernobyl!

 (グローバルだ!俺のストロボはチェルノブイリのように輝く)

 スクリレックスの音楽はグローバル(=世界的)に有名です。

そして、ダブステップなどが流れるクラブなんかでは、ストロボがチカチカと点滅しています。

チェルノブイリのように輝く」というのは、1986年に現・ウクライナで起きたチェルノブイリ原発事故の爆発のことを言及しています。

 

Kids explode and get mobile! No one even knows you!

 (子どもたちは爆発して動き出す!お前を知ってるやつなんていねぇ!)

スクリレックスの音楽はノリやすく、若者たちはすぐに踊り出します。

一方、モーツァルトのようなクラシック音楽は若者たちにはあまり馴染みがありません。

 

I make the whole world move! You play community theatre!

 (俺は全世界を動かす!お前は市民会館で演奏)

スクリレックスの音楽はメディアを通じて全世界の人々に聴かれています。そして、世界的なステージでライブ活動をしています。

一方、モーツァルトは、存命時は市民会館などの小規模な場で演奏活動を行っていました。当時は世界にアピールする方法なんてないですしね。

 

I gained your same fame from home on a blown out speaker!

(俺は自宅の壊れたスピーカーでお前と同じ名声を得たんだ)

スクリレックスは寝室のラップトップ一台で曲を作るところから始めました。そこから彼はどんどん有名になっていき、モーツァルトと同じぐらい周りから評価されることとなります。「俺はお前のように外に出なくても自宅にいながらにして名声を得てるんだぜ」と言っているのです。

 

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[Mozart 2nd verse]

 

Oh yes, I've heard that EP, and see, I transcribed it here. 

Tell me, what comes after the 68th measure of diarrhea?

 (よしお前のEPを聴いたぞ 譜面に起こしてみよう

おい、この下痢みたいな68小節目の後はどうなるのか教えてくれ)

モーツァルトはスクリレックスの曲を譜面に起こしますが、それをモーツァルトは下痢と称しています。また、音楽理論では予測できないような部分だらけなので、「この後どんなひどい展開になるんだ?」と尋ねているのです。

 

And what kind of drugs does it take to enjoy this? I've no idea!

 (どんなクスリをやればこの曲が楽しめるんだ?さっぱりわからない!)

クスリという違法行為でもしなければお前の曲は楽しめないぞ、と言っています。

 

I've seen more complexity in a couch from IKEA!

 (イケアのソファーの組み立てより単純な音楽だ!)

イケアはスウェーデン発の家具屋で、組み立て説明書が非常にシンプルなことで知られています。そんなイケアの家具よりもさらにお前の音楽は単純だ、と言っています。

 

You go piano to fortississimo!

 (お前はピアノからフォルテシシモへ行く!)

スクリレックスがやっているダブステップのような音楽は、はじめは穏やかな曲調で始まり、激しい曲調へとつぜん切り替わるものが多いです。これをモーツァルトは音楽用語を使って言い表しています。「ピアノ」とは「弱く」、「フォルテシシモ」は「非常に強く」(フォルテシモよりさらに強く)という意味があります。

 

That means "soft" to "very very loud", 'cause I'm guessing that you didn't know!

(つまり「弱く」から「とても強く」ってこと どうせお前は知らないだろうからな!)

モーツァルトは先ほど出した音楽用語の説明をします。スクリレックスは音楽理論の基礎すらわかっていないだろうから説明してやるよ、ということですね。

 

Why don't you put down your Cubase and pick up a real bow?

 (キューベースを置いて本物の弓を持ったらどうだ?)

Cubaseとは、音楽制作ソフトウェアで、様々なミュージシャンに愛用されています。ここでは、「キューベース」が楽器の「ベース(コントラバス)」とかけられています。ソフトを捨てて、本物の楽器に触れてみな、と言っているのです。

 

I rocked harder than you when I was 5 years old!

 (俺は5歳のときからお前よりも激しくロックしていたぞ!)

モーツァルトは幼少時から驚くほどの音楽の才能を発揮していました。現在のお前よりも子どもの頃の俺のほうが観客を魅了していたぞ、と言っています。先ほどのスクリレックスの「俺はロックスター」などへのアンサーにもなっています。

 

 

数あるEPICラップバトルの中でもかなりハイクオリティなものです。

個人的に、フロウはスクリレックス、リリックの内容はモーツァルトの勝ちだと思います。

 

 

この記事はEpic Rap Battles of History WikiおよびGeniusを大いに参考にしています。

引用部分はEpic Rap Battles of History Wikiから引用しています。

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