【EPICラップバトル解説】神対決 ゼウス vs トール (2of3)
ゼウス vs トール リリック解説の続きです。
1of3は→こちら
[Zeus 2nd verse]
Only a mindless fool would knock the fathers of philosophy.
(哲学の生まれの地を倒そうだなんて馬鹿の考えることだ)
ギリシャ神話の舞台である古代ギリシャではソクラテスをはじめとする多くの哲学者が生まれました。
My Greeks built the bedrock of democracy!
(ギリシャの民は民主主義の土台を築き)
民主主義の起源は古代ギリシャのポリス政治にみることができます。ちなみにデモクラシーの語源はギリシャ語の「デモクラティア」らしいです。
With astronomy, they charted out the movements of my kin:
(天文学で我の兄弟たちの動きを計算したのだ)
古代ギリシャでは天文学が大きく発展しました。そして、ギリシャ神話の神々は、星として具現化されていると考えられていました。つまり、「星=神々」として崇拝されていたのです。前行とこの2行でゼウスは古代ギリシャの人々の偉大さを語っているわけです。
All the pimps of Mount Olympus and me the king pin!
(そう、オリュンポス山の輩とその中心の我のことだ!)
ゼウスをはじめとするオリュンポス十二神はオリュンポス山の山頂に住んでいたといわれています。pimpとはスラングで「女たらし」「女を惹きつける男」「かっこいいヤツ」などという意味があります。
Let this sink in: I'm about to rain on your parade!
(わからせてやろう、お前のラップをぶち壊しにしてやる!)
イディオムを駆使したナイスな言い回しだと思います。「let this sink in」で「理解させる」(文字通りには「沈める、浸透させる」)、「rain on one's parade」で「〜のいい気分を台無しにする」(文字通りには「進行しているところに雨を降らせる」)という意味があります。これが、雨や雲などの気象を操ることができるゼウスの能力とかかっているのです。
Itchy trigger finger quicker with the bolts than Usain!
(指がうずくぞ、この稲妻はウサインより素早い!)
「itchy trigger finger」とは、引き金を引く人差し指がうずいている状態のことをいいます。つまり早くカミナリで攻撃をしたい、というわけです。さらに、「lightning bolt」(=稲妻)と、陸上選手の「ウサイン・ボルト」の「ボルト」がしゃれになっています。どちらも素早いですよね。
You're history! I'll be the first to put it in writing!
(もうお前は終わりだ!我はその歴史を文字に残す第一人者となる!)
「You're history!」とは、文字通りには「お前は歴史だ」ということですが、「お前を過去にする」つまり「お前の時代は終わった」という意味になります。さらにギリシャの歴史は、はじめて文字に記録された歴史といわれています。
MC Hammer just got struck twice by greased lightning!
(MCハンマーを電光石火が二度殺す!)
「ハンマーを持っているラッパー」すなわち「MC Hammer」、面白いですね。「U Can't Touch This」で一世を風靡したMCハマーとのしゃれです。そして、「greased lightning」とは、「電光石火」「非常に速いもの」という意味です。「Greece」と発音が似ているので、そこを意識した言葉選びになっているようです。さらに、「カミナリは二度同じ所に落ちない」という言い回し(「不運はそう何度も起こらない」という意味)を汲んだラインとなっています。そんな言い回しとは裏腹に、2バース目もお前を倒したぞ、ということですね。
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[Thor 2nd verse]
Rain, old man? This is hardly a drizzle.
You couldn't give the women in my homeland the sniffles.
(ジジイ、これが雨だと?霧雨以下だ
これじゃ我が国の女たちの鼻水は出ないぞ)
トールは、不死のゼウスをジジイ呼ばわりして、おそらく「I'm about to rain on your parade!」へのアンサーをしています。ゼウスが降らせた雨を、トールはものともしません。というのも、スカンジナビア半島は多雨気候で、雨には慣れているのです。そして母国の女性たちも、こんな雨では風邪をひかないぞ、と言っています。
You can keep your astronomers. I'll sail with the conquerors
For thousands of kilometers, discovering the continents!
(天文学者など知るか。我と共に旅した征服者は、数千キロを渡り大陸を見つけたのだぞ!)
ギリシャの天文学を尻目にトールは、北欧の航海者、レイフ・エリクソンの自慢をします。レイフ・エリクソンはコロンブスよりも500年ほど前にアメリカ大陸にたどり着いたと言われています。
I'm Alpha dog dominant! You can't beat me!
(我は最強の支配的地位にいる!お前じゃ歯がたたない)
「alpha dog」とは、犬の群れで一番強く地位の高い、リーダー格の個体のことです。(北欧神話に出てくる二匹の狼のことも言及している…?)
I will drop you like Greece's GDP!
なかなかのパンチラインが出ました。もちろんギリシャの経済難のことですね。ギリシャのGDPと同じように、お前も落とす(=倒す)と言っています。
Send you deeper underground than the depths of your Hades!
(ハデスより深い地下に送り込んでやろう)
ハデスとは、ギリシャ神話で、地下の冥界を支配する神です。トールは、そんなハデスよりも深い地下へゼウスを送りこむほど、むごく倒してやろうと言っています。
Now, make like your daddy and swallow my babies!
(父親のまねして、我の「赤ちゃん」を飲み込みやがれ!)
ゼウスの父親であるクロノスは、子どもたちに権力を奪われるという預言を受け、それを避けるために、生まれてくる子どもたちを飲み込んで食べてしまいました。その真似をして、「ベイビー」つまり私の「精×」を飲み込みやがれ、という侮辱を、トールはしているのです。これは下品かつ屈辱的でしかもうまい、かなりハイレベルなディスです。
1of3はこちら
2of3はここまで
3of3はこちら
この記事はEpic Rap Battles of History WikiおよびGeniusを大いに参考にしています。
引用部分はEpic Rap Battles of History Wikiから引用しています。
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